最近の興味ある投資領域についての雑記 / 日本流グローバル
投資の仕事と考えること
自分の仕事としてはいろいろこうやって文章を書いてはいるが、投資をするのが仕事で別にこの書いていることは仕事ではない。いや厳密にいえば仕事の一つではあるが、センターピンがあるわけではない。大体土日や、夜とかに書いていることが多いのでまあ趣味や享楽さに近いものである。
ということで自分の本職としては良い起業家を見つけて、投資をし、支援をする。もうそれだけではある。(もちろんファンドレイズなどその他も多くあるが省略)それ以外の活動は書いたりイベントでたり、飲み会に行ったりなどは、すべては良い起業家を見つけて、投資判断をし、支援をして、入れたお金よりも多くのお金をリターンとしてお戻しするためのものである
この文章ももちろん自分の知りたいことや、考えていることの言語化の一助として書いてきており、どこかで投資方針に対しての自分の思考整理のためや、投資テーマ発見のためにやっているものでもある。
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VCが投資仮説を持つ意味
VCとして仕事をはじめたときぐらいから、毎年なるべく注目投資領域ということを書いてきた。この仕事を続ける限りはなんとなく年始には書いてみようと思っている。だが、例えばVCとして明確に投資テーマをもつ意味がどこまであるかというのは難しい。
#39 Requests for Startups 2024ナカジ@nakajish·1月9日Read full story
なぜなら投資家がいくら投資テーマをもとうとも、なにかをはじめることができるのは起業家であるし、その起業家が見つからなければ何をリサーチしても、その投資につながる可能性は未知数だからである。
更にVCを無意味に卑下するわけではないが、実際のビジネスの最新の現場を見ているのは起業家であって、そこの事実が一番貴重なわけで、投資家が考える起業テーマより当たり前だが起業家が考える起業テーマのほうがセンスが良い場合が多い。どちらかというとその現象を後から遅れて言語化しているのがVCの役割であるようにも思える(それもそれで重要な役割だとは思うが・・)
なので別にテーマを考えなくても良いというか、時間でいうと無駄になる可能性は高いというのが特にシード期におけるVCでは正直ある。それでも自分がなぜ注目領域を考えているかというと、まあそういう性分だからという話に尽きるかもしれない。ただ自分が理想としているVC像の1つとしては海外のVCなどの姿勢をリスペクトしていることも影響があるかもしれない。
USのVCはナラティヴを創る
これが良い悪いかというのは棚上げするが、USのVCは投資テーマを作り出すのがうまい。もっというとVCだけではなく、そういった産業の立ち上げみたいなものはやはりUSからでてくるものが多い気がする。
例えばMeta社なんてすごい気合がはいった社名変更なのではないかと思う。結果がどうなるかはまだわからないが、メタバースという言葉をつくって盛り上げることができる、旗を立てる勇気というのがある。
そういった動きに比べるとやはり日本のVC含めて受け身であり、USのナラティヴの翻訳が多い感覚がある。ただそれも正しいとは思う。覇権国家ではないので、投資金額の量などを考えてもそういった創る作業が日本からできるのかはわからない。なので戻ると投資テーマをそこまで考える必要性があるかというと怪しい。
ただそれでも重複だが、自分の中では常にどういった領域が良いかなや、日本なりのナラティヴが創ることはできないかなというのはチャレンジしてみたさもあるし、今後も続けていきたい。自分なりのこだわり感もある。
前置きが長くなってしまったが、いま2024年夏の時点でのいまの自分の投資方針を3つぐらい考えているので言語化しておこうと思う。
①Day1グローバル・日本流グローバル
②スモールビジネスかどうかは想像力の問題
③Big issueへの注力
粒度はバラバラだがこの3つに関して今は考えている。
①Day1グローバル・日本流グローバル
これは長く言われていることだけど海外進出は市場規模を拡大するためには考えられるものとして小学生でもわかる打ち手ではある。一方言うのは簡単だが、本当に難しい。
ただ数年の変化としてWeb3というトレンドあたりから、日本の特に若い起業家あたりの意識がすごく外にオープンになったような気配がある。
またVtuberという市場の盛り上がり感は、前回USに行って感じたり、映画・アニメ方面においてもヒット作がどんどんでていっていることもあり、日本流グローバルというのはまだまだありそうな予感はしているし、PFがUS企業によって整備されたからこそのタイミングとして良いタイミングな感覚もしている。
#35 失われた30年で何を日本は得たのかナカジ@nakajish·2023年11月29日Read full story
シンプルにいえばコンテンツ・IPというものによってくるとおもうが、もっと日本流のものでグローバルにでられる産業はあるのではないかとも思っている。それは芸能・お笑いみたいなものや、食や建築というものなのかもしれない。ファッションなのかもしれない。
ソフトウェア企業においても例えば投げ銭・ギフティングカルチャーは日本っぽいし、推しというような概念に関してもファンダムという言葉はあるが輸出可能性はあると思っている。
そういった海外に対しての現地化を行うのではなく、日本なりのなにかをもとにグローバルにDay0からやれるものというのは、大変だとおもうが投資としてはまだまだ考えていきたいところではある。
②スモールビジネスかどうかは想像力の問題
以前なめらかな起業というタイトルで記事を書いたが、そこでかいたように、スモビジかスタートアップかというのはバイナリーなものではなく、スペクトラムのようなもので多義的・複雑なものだと思う。
いままでは変化が大きく、ソフトウェアというものが比較的アセットが軽く開発することができたので一番VC投資としても分野としてそういった業界にお金があつまっていた。しかし例えば1970年代はVCはセミコンダクターに投資をしていたし、1980年代はパーソナルコンピューター周辺に投資をしていたように、急成長分野ではあるが、ソフトウェアではない分野に投資をしていた。
いまVC moneyが多くなったがそういった変化が少し乏しい可能性がある時代にはいっている。そのなかで今までVCマネーが流れていなかったけれども、起業家の志やお金の編集によってはもっとVCが期待するIRR・資本コストに合う産業分野はあるのではないかと思っている。
一方でソフトウェアの良さは粗利率、営業利益率の高さではあるため本当にこのような分野がよいかはわからないが、一時期ソーシャルゲームが営業利益率が良すぎるから他の産業に手が出せないと同じような状態が起こっている可能性はある。
その想像力によっては、他の産業であっても大きなリターンを生む投資はあるはずだ。そういったものを見つけてみたいと思っている。これは①の日本流グローバルと混ざる部分はあるようにも思う。
③Big issueへの注力
以前の記事でも書いたがBigissueにお金が集まる時代に入っているように感じている。様々な要因があるが、よりこれは良くも悪くもBig issueの深刻さが増してきたことによって、それをある種VCマネーなどが見過ごしてきてしまったことによる反動と、また上記のように手間で起きている変化率が下がってきていることの組み合わせのように思える。
#43 お金の流れを変えるための"Big issue"の提起ナカジ@nakajish·2月15日Read full story
この分野でのThought leardership をもっているMarc Andressenがいうように、パンデミックなどに対応できるようなものがBuildできていなかった事実がある。手前のPainなどの解決にインターネットやSoftwareというものをつかって解決してきたが、より引いた目線においてのBig issueに取り組んでこなかったのではないかということをブログを通じて伝えている。
こういったBig issueに取り組むには単にスタートアップ単体や、VCだけが動いてもなにかが変わることはない。なので国との連携や国策がどうなっているか、国際情勢がどうなっているのかについてはこういった投資テーマは密接になっていく。
書きながら思ったが広義では国がセレクションしきれない大きい補助金のような存在をVCという金融機関が一部担っているのかもしれない。
”国策は買い”といわれるように、Big issueに挑むようなスタートアップにとってはお金が集まりやすい時代に入っているのかもしれない。ただテーマが大きいため、どのようにエントリーすべきか、シリアルであれば大きな金額を最初から調達をして参入するというのもあるのだとは思うが、このあたりのBig issueに挑み方というのはVCとしても考えなければならない。それはVenture creation的な要素を強くしていく必要があるのかもしれないし、自分もこういったテーマをどのように投資できるかはもう少し工夫が必要かもしれないなと思っている。誰か一緒に考えよう。
投資思想は不変だが投資戦略は可変でもいい
自分がどういうような未来を目指して投資をしていきたいかみたいなビジョンは不変にもっておいたほうがいい気はしている。しかし、時代の変化などにおいて投資戦略は可変にしている。(実は投資戦略というのは80%ぐらいはファンドサイズによって固定されるのでは?というのはあるのだが、それは別の話。)
ある年は月1ほど投資をしていたが、今はだいぶ投資スピードは落ちている。そういうの関係なくずっと投資するのでもいいとはおもうし、基本的には正解がないが、自分なりにその年ごとに投資戦略は可変的にしている。
今回このように現状2024年の夏は考えているが、また冬には違うことを言っているかもしれないし、2年後ぐらいには確実に変わっている気がしている。ただずっと投資テーマや投資領域については考え続ける気質であるし、そういうのが好きな人なんだとおもうので、意味がなかろうとVCという仕事をし続ける限りはそういうのをやっているのだと思う。また更新があればこのメルマガなどで更新したい。
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