Top-tierVCの投資先から投資トレンドを考える
-海外VC Portfolioを見ることの意味の是非
海外のVCの投資先がどういうのがあるのかは、起業アイデアを考えるときや、VCとしても投資候補先を考える上ではテッパン的な活動ではある。一方で、So What?な側面は否めない。自分も起業アイデアやVCのキャリアになってからは続けていたがどこまで意味があったかは正直わからない。あらゆる環境が違いすぎて海外のスタートアップが参考になる面もあるが実はそこまで役には立たなかったことが多いと個人的には思う(知識欲は満たされるが)
とは書いたもの、意味がないわけでは全くなく、”どういったトレンドがあるのか・どういう分野が注目を集めているのか”ということをざくっと知るためには意味がある。そのため改めて久しぶりに、Toptier Firmと言われる海外のVCが今年9ヶ月ほどでどういうスタートアップに投資をしていたのかをさらってみた。(どこがToptier Firmかという議論はあるのだけれども、Sequoia・Benchmarck・a16z・Lightspeedあたりを今回は参照してリサーチを行った)
*あくまで自分の好み・興味分野からピックアップしているので、網羅的ではないですし解説も最低限にしているので、ざっとどういう企業があるのかってうことを知ることができることを目的としてます。バイオ・Climatetech系は拾いきれてないです。
-Generative AI
OpenAIがトレンドを創った分野である。ただまだ数としてはそこまで多くはなかった。おそらくこの分野をもう少しリサーチを深くしようとすると、YcomであったりProducthuntなどシード寄りの情報リソースに当たった方がいいだろう。
また機械学習の意図でAIを活用していた企業がより今回のGenerativeの流れを受けてそちらの文脈に乗ってきていることも感じる。
・汎用LLM
OpenAIが汎用的なLLM分野として勝者ではない。ほとんどがOpenAIから辞めて独立した人間が多いが、まだまだこの分野にはお金が入りこみそうである。ただバックについているのはVCというよりは、GAFAMのような企業が多い。
そして個人的にはこのあたりは地政学的・防衛的な要因も関係してくると思う。例えばMistalAIなどはヨーロッパにおいて独自のLLMをもつべきだという意見からでてきたもの。こういった地政学/防衛の関係で産業が生まれるということは今後より見られる分野ではあると思う。
OpenAI:説明不要。Chat-GPT/DALL-E2 などで現状のマーケットリーダー
Anthropic:Claudeという対話AIを開発。元OpenAIメンバー。OpenAIがMicrosoft陣営なら、こちらはGoogle陣営(620億円をGoogleから調達)AIの安全性に対して注力
Conhere:トロントベース。基本的にはChat-GPTライクなサービスだが、より企業の利用を想定したサービスを開発
MistalAI:フランス本社。オープンソース活用で伸ばしていく予定。2023年末までに、ChatGPTの GPT-3.5とGoogle Bardを「かなりの差」で上回るものを構築予定
・企業活動の生産性向上
AIによる生産性向上は起こってほしい事象である。まずは生成系と相性良く利益に繋がりやすいマーケティング分野においての企業が多くの額を調達している。売上などはまだ調べきれてはないが、着実に成長しているのだろう。今の技術と解けうる問いは今後も進歩していくはずで、生産性向上には期待している。
Tavus:一度音声や動画をとれば、その人の言語で他の言葉を話させることができる。活用すればE-mailマーケティングなどで動的に言葉を変えることができたのが、動画マーケティングにおいても活用可能に
Typeface:マーケティングコピーや画像を生成することができるようになる。そのため、データのセキュリティやブランドが承認した文言やアセットから生成することに注力
Jasper:Typefaceに近い領域。同じく企業のマーケティングのためのコンテンツ生成(ブログ・SNS投稿など)
Macro:AI搭載のWord soft
Updata.AI:Chat-GPT活用したカスタマーサクセスSaaS。応答などを自動化
・エンターテインメント
ユースケースはこの分野はまだまだあると思う。後述するCreative に近い分野ではあるが、ざっくりとエンタメとしては広くはあるがより人を楽しませるためにこの技術の活用は可能性しかない
Character.ai:空想のゲームのキャラや、著名人と話すことができるChatbotサービス。ある記事によればChat-GPTより年齢が若い層に刺さっており、継続率も高いらしくエンタメのユースケースを切り開いている
Inworld:ゲームのNPCにAIを使い活性化させる。これは夢がある。ゲームの可能性の広がりを感じる
InflectionAI:パーソナルAIのPiを開発。正しい答えを教えるChat-GPTなどと異なりKindでSupportiveな性格にチューニングしていき、デジタルアシスタントを超えた存在のAIを構築していくことを目標としている
・Creativeツール
わかりやすく生成系をクリエイティブのために使う分野にもお金が集まっている。動画・画像・音声など表現方法各分野においては浸透していくであろう。一方まだまだ既存のクオリティでどこまで代替することが可能かはわからないが、時間の問題でもある気はしている。
Runway:Gen-2を開発・運営。text-to-videoに注力
Elevenlabs:Generative Voice AI。音声の生成化。一方Deepfakeの問題も多く産んでしまっている。声優のリプレイスもあり得るのか
Captions:Snap出身の起業家。トークビデオの領域におけるAI活用を進めている
Midjourney:画像生成。StabilityAIと共にマーケットの知名度高い
Ideogram:画像生成。タイポグラフィなどに特化
・専門職のリプレイス・補助
まだ数としては少なかったがおそらくこのあたりはこの数年もう少し更にでてくる予感がある。”各種専門職がGenerativeAIによって補助・リプレイスできないか?”という問いは真剣に考えたい。
Harvey:弁護士業務のリプレイス・補助
Jitty:不動産購入、賃貸分野におけるAI活用
-Developer tool
どのようにしてこのトレンドをくくるかというのはあるが、Developer Successというべきか、こういったソフトウェア開発のツルハシを提供するサービスにお金が集まっている。
いわゆるAI Embedded なサービスがゴールドだとしたら、ゴールドラッシュ時に儲かったのはツルハシというアナロジーにおける、AI開発補助サービスというものは伸びるということで投資が集まっているのではないだろうか(この逸話が正しいのか知らないが)Benchmarkがその領域のLangchainとMindsDBに数少ない中でも投資をしているのが流石だなと。
またGenerativeAI周りのことを考えた際に、これはゼロからのスタートアップが勝つシナリオより、既存のサービスが強くなる技術的変化の可能性は大いにあると捉えている。独自のデータアセットをもてるかが重要になってくるとすると、既存でサービスを展開していた事業者がAIによってよりサービスの提供価値が強化できるほうがまずは世の中に早く現れてくるのではないか。そのシナリオの場合はこういったTool・サービスが伸びていく機運は高い。
・AI-Embedded tool
AI-Embeddedなツールというのはどんどん増えていく。NotionにもMemにもnoteなどにももうついている。そしてその効力を今の現状で発揮できるのは開発ツールである。Copilotは投資先などを見ていても多くが導入しているし、正確性が求めれられる開発においてはよりAI活用は進むだろう。
Replit:Copilotにも近いが、AI-Embedded な開発ツール/オンラインIDE。コードを書かずに開発ができる日も近い?
・AI開発のためのサービス
冒頭紹介したAI開発のための開発サービスは順当に伸びる・伸びていると思える。今後にAI-Naitive Companyがどんどん生まれてくるはずだが、その上でこういった開発サービスを使うのは必須になってくるはずである。
Portkey:技術チームがわずか2分で生成AIアプリの構築と展開を可能に
Langchain:単純なAPIをつなぐだけではなく、複雑なLLM活用をする際のライブラリーを提供
MindsDB:AI開発のAWSを目指す。開発者に専門知識がなくてもAIを既存サービスに組み込むことができる
・Nocode
使い倒された言葉ではあるが、この分野にはお金はまだまだ集まっているようだ。日本においても兆しは多い。特に対ユーザーというよりは、社内の人間の生産性向上に向けた開発をNocodeで行うことは今後も進むであろう。
特に個人的には後述するAirplaneもそうだが、Retoolのような自社内の管理サービスをNocodeで制作するような流れはより日本のエンタプライズ企業dめお起こってくるのではないかと思う(そもそもDXという言葉がうろついているようにデジタル化することからなのかもしれないが)
Glide:スプレッドシートからアプリを作成することができる
Airplane:社内システムをノーコードで作成することができる。SaaS企業のカスタマーサクセスチームが内部管理サービスを作成したりしている
-Cyber Security
開発ツール周りも日本のスタートアップであまり見ないが、このCyber Securityの分野においても少ないのは課題ではあると思う。一方言語関わらずの共通の課題のため海外スタートアップを活用すれば良い状況になってしまうため、そこまでニーズがない可能性もあるがどうだろうか。
今後も例えば自動運転技術であったりより全てのものがインターネットにつながる流れは不可逆である中で、全てのソフトウェアの情報がアップデートを繰り返すわけではない。そういった際にセキュリティというのはより重要視されていくことは間違いないであろう。
・クラウドセキュリティ
オンプレからクラウドにサーバーが移行していったのはこの10年の一大トレンドではあるとは思う。そうした際に複数のクラウドを活用する際のセキュリティについては差し迫った課題感がある。正直自分ももう少しリサーチしないといけないが、CNAPP(クラウド ネイティブ アプリケーション保護プラットフォーム)やDSPM(Data Security Posture Management)のような領域にはお金が集まっているようだ。
Wiz:最速で10BのValuationがついたイスラエルのセキュリティ企業。クラウドセキュリティ周りでプロダクト展開
CYERA:AIを活用してクラウド・オンプレ関わらずデータ単位で機密データを検出・分類・保護する
・サプライチェーン攻撃対策
「情報セキュリティ10大脅威 組織編」によると、2020年以降3年連続で「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」がランクインしている。簡単にいうとサプライチェーンにある中でセキュリティが弱い企業から狙い、連鎖的に企業にサイバー攻撃をかけるようなものだ。
世界的にも問題になっており、SaaS含めてより取引先含めたサプライチェーンにおいてのDX化が進むと付随してでてくる問題であることは間違いない。
Savvy:危険なアクションを起こしそうなユーザーに対してポップアップでアラートなどを出す。SaaSのセキュリティに注力
Socket:サプライチェーン攻撃を防ぐために危険なソフトウェアなどを自動的にブロックするなどを行う
-Crypto
今年に限ってはCrypto winterと呼ばれるようにそこまで大きな調達はなかった。ただ着々と主にProtocolLayarなどは昨年などに多く調達したところも多いので、技術進捗は進んでいるはず。クロスチェーン周りがより整ってくるとBlockchainのユースケースはまだまだ伸びる余地があると個人的には捉えている。
今回はCryptoに特化したファンドをリサーチVCに入れてなかったが、このあたりはまだまだOpportunityがあるはずで、別途リサーチしたい。
・Protocol
BlockchainにおいてはまだまだProtocol Layerの課題が大きい。スケーラビリティの問題であったり、マルチチェーン・クロスチェーンの問題であったりする。Polkadotのパラチェーンであったり、CosomosのIBCであったりと開発方法は様々なものを考えてはいるが、このあたりの実装・進捗がこの数年は進むのではないかと思う。
MattersLabs:イーサのLayer2であるzkSyncを開発。Optimistic rollup・Polygonなどと同じくzk-rollup によってガス代問題について取り組んでいる
Layerzero:名の如くLayer1より下階層を想定し、マルチチェーンに対応できるプロトコルを開発。オラクルとリレイヤーとエンドポイントで、チェーンからチェーンの情報を確認
StoryProtocol:”IPのためのGit”を目指している。IPをBlockchainで管理するという目的であり野心的であるし、GenerativeAIの時代に合っていると思う。個人的に注目しているが、まだ実態が掴めていない
・NFT
NFTIPは現状は一段落していると思う、ただまだまだこの分野は個人的にはまだ見ぬユースケースがあるとおもっており、上記のProtocolの進捗と共に面白いものがあるのではないかと期待している。
Sound:アーティストが新曲にNFTをタグ付けして販売することができる
-EV/自動運転/Robotics
若干このあたりは中国との競争であり対立においてのトレンドでもあるとは思うが、EVへの補助金含めたものが後押しとなっておりこのあたりにおいてもいくつかスタートアップがお金を集めている
純粋にSF感としてはこのあたりは個人的な好みではあるので、もっと変化が加速し想像を超えた未来をつくってほしい
Pebble:iPhoneのようなモダンなデザインのEVをつくる
Mobilyze.ai:充電ステーションを事業主が簡単かつ手頃な価格で設置できるサービス
StackAV:自動運転トラック開発
Collaborative robotics:元Amazon副社長が、共感を原動力とする新しいタイプのロボット企業を創設。どういうものが出てくるか期待
ということで、一旦ざっと自分のしたリサーチの中で気になった企業をもとにテーマを抽象化してみた。まあ当たり前なトレンドだなというものが多い中ではあるので、少しつまらなかったかもしれない・・
冒頭にも記載したが、よりEdgeなものを調べるとしたらUSのSeedファンドやアクセラレーターなどを参照したほうが良さそう。ここで紹介したものは大半はPMFは終わっている企業が多いとは思うので起業のヒントにどこまでなるかは難しい。
今回はリサーチしきれなかったが、Climate系やBioなどはまだまだ面白い企業があるはずで、ここで取り上げたのも一例として考えていただければ幸い。
より日本からも面白い・社会を大きく変える企業がでることを目指して頑張りたい。
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