「それ、ChatGPT(スプレッドシート)でいいんじゃない?」
今回は日々ChatGPTなどのようなプラットフォームAIサービスとあえてここで呼ぶと、そういったサービスをほぼ毎日利用しながら生活しながら、起業テーマについて考えていたことについて書いてみたいと思う。そのきっかけは、ChatGPTのようなプラットフォームAIはいわば、エクセル・スプレッドシートみたいだなということを考えたからである。そのようなアナロジーで物事を見ることによって、起業テーマの選定に活かせることができないかとざっくり考えたことを言語化してみる。
ChatGPT≒スプレッドシート説
生成系AIの素晴らしさはもう何度もいろんな記事で紹介されているので、ほとんど省略するがさまざまん生活の仕方を変えていっている。自分がVCになって7年ぐらい経つがこれまでで一番の変化を正直感じている。期待度で言うとweb3も相当なものではあったが、実際に自分の日々の全ての生活においての変化という意味においてはやはり今回の変化は自分の中では相応無ことだなと思う。
余談だけれども、1週間ちょっとほど旅をしようと思って、ほとんど予定を決めずにヨーロッパに久しぶりに行ったのだけれども、ChatGPTのおかげで旅が結構変わった。その都市の場所などを指定して、現地の言葉で調べた情報が出てきたり、自分のこのたびに求めることをプロジェクトで統一させて、プロンプトで書いておくことによって、自分が出会いたかったものなどとも出会えることができた。また歴史好きとしては、歴史的建造物を見ながらChatGPTに質問しつつ観光ができて、専属ガイドが一人ついたまま観光ができたような気がする。

このような生活の変化は、iPhoneが出た当初とかに近いのかなと思ったりもするし、windowsのパワポ・エクセル・ドキュメントが出たぐらいのインパクトがあるのではないかと思う。これまでのトレンドと違うのが、一部の人だけや、一部の業務にだけ影響があるものではなく逆にその影響範囲が読めないというか全般的に渡りすぎてしまうというところにあるのかもしれないなと思えた。
何が言いたいかというと起業テーマとしてはものすごく可能性を感じる一方で、そのようなプラットフォームAIサービスが解ける範囲・対応しうる範囲が広くて、どの課題がサービスとして切り出していったら良いのかが判断しずらいなと思うということだ。
スプレッドシートかSaaSか
“それってスプレッドシートでできるんじゃないですか?”というのはSaaSの投資検討時に、よく耳にしたし、議論した話だと思う。実際、スプレッドシートは汎用性が極めて高い。ある程度のテクニカルスキルがある人なら、ちょっとしたアプリケーションめいたものを作り上げることもできる。では、なぜわざわざSaaSに投資し、起業し、わざわざ専用のサービスを開発して提供する必要があるのか。これとほぼ同じ問いが、今後のAIスタートアップにも当てはまってくるのではないかと考える。
たとえばChatGPTは、プロンプトの工夫によって、たいていの文章生成から、ちょっとしたプログラムのバグ修正、あるいは海外情報のリサーチまでこなしてくれる。それこそ旅先での情報整理からレストラン予約のアシスト、書類作成の補助など、使おうと思えばかなり幅広く使える。まるでスプレッドシートのように「万能に見える道具」だと言いたい。でも現実には、SaaSという形で専用ツールを使うほうが圧倒的に楽なシチュエーションがあるように、ChatGPTだけでは手間がかかりすぎる、もしくは精度が足りない、ユーザーインターフェースが不十分といった場合が確実に出てくると思う。
ここで重要なのは、汎用性の高さとUXの質のトレードオフだと考える。スプレッドシートの場合は、セルの1つひとつに好きな情報を入れて参照式を組めばいい。しかし、それらの式が複雑化すると属人的に管理されることが多く、人が変わるとそのまま破綻するリスクを負う。ChatGPTなどのプラットフォームAIサービスも同様で、自由度が高いがゆえに、自分でプロンプトを組み立て続ける手間や、カオス化するやり取りをどう整理するかという課題があると思う。AIがたとえ高性能であっても、それを“どう使うか”というUX設計は別の話なのだと思う。
汎用ツールではなく、サービスとなるとき
ただし、ある種のリテラシーが高い人は、スプレッドシートだけで高度な分析やワークフロー管理ができてしまう。同様に、ChatGPTに複雑なプロンプトを書きこむことで、専門的な情報収集や文章化ができてしまう人もいる。とはいえ、それはごく一部の“操作が得意な人”に限られる可能性が高い。
大半のビジネスパーソンや、特に急成長する組織では「誰でも同じように使いこなせる」仕組みが求められると考える。その意味で、個別具体的なタスクをガイドするように作り込まれたSaaS的ソリューションにはやはり大きな価値がある。
AIを使ったスタートアップが、プラットフォームAIをそのまま導入するだけでなく、特化型の“AIサービス”を作る意義はまさにここにあるのではないかと思う。「それ、ChatGPTでいいんじゃない?」という素朴な問いがSaaSと同様に出てくるが、セキュリティや正確性、さらに組織全体での使いやすさまで含めると、やはり専用サービスの強みは大きいのだと考える。
音声インターフェースとAIの親和性
さらに最近、個人的に面白いと思っているのが、音声入力との組み合わせだ。ChatGPTのような生成系AIが発達すると、キーボードからテキストを打ち込むだけでなく、音声で対話しながら答えを得る体験がどんどん最適化されていくのではないかというのは定説だとは思う(もしデバイスシフトが起きるとしたらiPhoneの次は音声型のインターフェースの気がしている)
旅先や移動中にスマホを開かなくても、イヤホンと音声アシスタントがあれば、まるで人間のガイドと会話するかのように情報収集ができる。それが観光だけでなく、ビジネスの現場にも応用される可能性は高いと思う。
ただし、音声インターフェースを真に活かすには、細かなユースケースに合わせた工夫が欠かせない。たとえば飲食店のオーナーが在庫管理を音声でやりたいとか、工場のライン作業員が両手を使って作業しながら、必要なマニュアル情報をその都度呼び出したいとか。単に音声認識とChatGPTをつなげただけでは機能しない現場特有の要件がたくさんある。そこがまさに、AIを活用したスタートアップが「特定の課題」を解決しにいく余地だと考える。
汎用プラットフォームと特化型アプリケーション/サービスのあいだ
ここまで書いてきたように、ChatGPTのようなプラットフォームAIサービスは、まさにエクセルやスプレッドシートのごとき“何でもできる道具”になりうると思う。とりあえず何でも自力でやろうと思えばやれるし、スクリプトやマクロ・AIにおいてはプロンプトの工夫次第で無限の可能性がある。それでも、多くの人はそこまで使いこなせない。組織として成果をあげたいときには“ワークフローを標準化し、結果が担保されたパッケージ”に身を置きたい、というニーズが生まれる。そう考えると、スプレッドシートの万能性を受け入れつつも、SaaSが必要とされる理由と全く同じ構造が、今後のAI活用にも表れるのだと思う。
特に生成系AIの場合、その守備範囲が広すぎて、どこに特化したサービスを作るのかが悩ましいとも感じる。そこは投資家や起業家にとっての大きなチャンスであり、同時にリスクでもある。web3でも「結局、既存のサービスでやれることを無理に分散化する意義はなんだっけ?」という問いが常につきまとっていたが、AIでも「それってChatGPT本体に任せればいいんじゃないか?」という議論が必ず起きると思う。
しかし、だからこそ「マクロな視点」から見ると、プラットフォームAIの登場は“一つの大きな波”として認識しつつも、その波によって立ち上がる無数の“特化型AIサービス”こそが興味深い。歴史を振り返っても、スプレッドシートなどの登場が無数の財務・経理SaaSの余地を奪ったわけではない。むしろスプレッドシート/エクセルの偉大さが多くの新規サービスを生んだ。現代であれば、スプレッドシートがGoogle Apps Scriptなどでさらに強化されても、なおSaaSが生まれ続ける現実がある。ChatGPTが磨かれていくほどに、そこから枝分かれする形で新しいビジネスが数多く出てくると考える。
AIツールか?AIサービスか?
結論として、プラットフォームAIサービス(基盤LLM)が当たり前のように普及していく未来はほぼ確実だと思う。けれども「それだけで何でも済ませよう」とすると、結局は操作が属人的になったり、組織的な運用には向かなかったり、専門領域の要件が反映しづらいといった問題が起きてくる。ここにこそ、「それってChatGPTでできるんじゃないの?」という問いに対して「確かに可能だが、実務レベルで考えると専門特化のSaaSを使うほうが楽でリスクも低いですよ」という答えが成立するのだと思う。
一方で、使いこなせる人にとってはChatGPT自体が超強力なスプレッドシートのようなものであり、“無駄な機能”は要らないと感じるかもしれない。その二極が存在するところに市場の面白さがある。実際に自分自身、旅先での情報収集はChatGPTを駆使して相当快適な体験を得られたし、一方でもう少し機能が固まった「旅計画SaaS with AI」があればサクッと使ってみたいという思いもある。人は意外と矛盾した欲求を併せ持つものだと思う。
では、これからの時代にどういったAIスタートアップが輝くだろうか。私は、プラットフォームAIの汎用性を受け入れつつ、そこからこぼれ落ちる煩雑さを丁寧にすくい上げるサービスにチャンスがあると考える。過去のSaaSブームが「それスプレッドシートでいいじゃない?」を回避したように、専門領域への深い知見や、使いやすい音声インターフェースの仕組み、セキュリティやコンプライアンスを含めた統合的な設計が不可欠になるだろう。そうした“小さな導線の差”を埋めるサービスが大きく伸びる可能性は十分にあると思う。
この問いはまだ答えが定まらないし、AI領域の進化は早いからこそ、その都度自分の頭で考え続ける必要があると思う。それスプレッドシートで良いんじゃないか、と同じような問いが今後もAI起業分野に、それってChatGPTでいいんじゃないか?というようなものが生まれてくるとは思う。その問いにうまく答えていくことができる分野、サービスなどが今後投資領域としても気になるし、起業を考えている方々は考えるに値する問いであるように思う。
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