CreatorVC:Not boring capital

日々VCで働きながらもVCという業界がどうなっていくのかっていうのは常に考えているテーマなんですが、基本的にはUSのVC歴史の後追いだと個人的にはVC業界を捉えており、この数年でファンドサイズの巨大化がはじまり次は巨大化・金融機関化していくVCと、マイクロVCやソロファンドっぽいVCがいったりきたり、どちらが正しいというわけではなく、でてくるんじゃないかな〜と注視してます。

そのなかで個人的に非常に注目しているNot boring capitalというファンドについて3号目が出来た記事を拝見したのでどういうVCなのかざっくり改めて調べてみました。

時間ない方向けにはGPT3に要約を依頼したのでこんな感じの内容みたいです。

(メルマガ今年は更新したいので下記登録よければお願いします)


Notboringcapital

Not Boring by Packy McCormick
Tech, web3, optimism, and strategy... but Not Boring. Click to read Not Boring by Packy McCormick, a Substack publication with hundreds of thousands of readers.

ファンドのページがSubstackのあたりから思想を感じるVC。2021年にsoloファンドとして設立してから3M,25M,30Mというファンドサイズでレイズしている。

まさにSubstackのメールマガジンでの功績を元にファンドを組成していったソロファンドである。2019年からメールマガジンは始まっている(当初はPer my last Emailという別タイトル)が、現在で18万人ほどの登録(2023年1月時)となっている

最初はメルマガを読むとライティング授業の一環として初めたみたいである(50人の読者の獲得を目的とすると書いてて、今や数万人なので何事も初めて見ることが大事だなあと、メルマガからの抜粋だけれども1年かかって500名そこからはどんどん倍々ゲームで増えていっている)

It took 313 days for the first 500 people to subscribe to Not Boring, 42 to go from 500 to 1,000

初期はよくあるメルマガのようにその週の気になるニュースや読んだ本などを配信していた。最初の1年は300人ほどの登録数だったようだ。その後Notboringというオンラインクラブを設立したのが2020年1月。記事によると2019年に仕事を辞めてニュースレターを書き出し、社外の人と課外授業をするようになり、退屈しなくなった(Notboring)このことを広げていきたいという意図。"So, what do you like to do outside of work?"とある方に尋ねられて、スタートアップで仕事しかしてなかったことに気づき、メルマガ含めてそういった活動を行い始めたようだ

Not Boring, a club for curious thinkers, creators, and explorers who want to build more interesting lives outside of work together.

その後に2020年にPackyがはNot Boringにリブランディングしていっていき、2020年の5月ぐらいから他者のコンテンツの感想のメルマガから自分なりのInsightを強めにまた文章自体がどんどん長くなっていっているSnapについて、孫正義・ビジョンファンドについてや、PIPEについてのDeepdive(ここではCPAベースでマネタイズしているので、こういったところのストリーテリングの効果実感が後に説明するStoryVCとしての立ち位置を考えていったのだと思う)

登録数と伸びとともに月曜日は自分のエッセイ、木曜日はスポンサードによるDeepdive投稿になっていき、そしてエンジェル投資シンジゲートの「Not Boring Syndicate」をAngel listを活用して立ち上げ 、 読者が彼と共に企業に投資 できるようにしていった。まさに無料から有料コンテンツ、ファンド化へという流れで成長していっている。9ヶ月弱の間に、15社に200万ドル以上を投資してきたことが資料によると書かれている。

Invest with Not Boring’s Syndicate
Investing in Not Boring founders and sharing their stories in the Not Boring Newsletter.

そして2021年に5MのNot boring capitalをファンドレイズして投資をし始めている。実際の戦略などは下記に記載する予定だけれども、この1号ファンドのときはInvestmentDAOのようなものを本当はやりたかったようだ。

これはFounderのPackyの性格だとはおもうし、今っぽいなとおもうのだけど文章を読んでいてもすごいオープンな感じが伝わってくる。情報開示の度合いも含めて非常に文章から人柄が伝わってくる。実際に下記docsからNot boring capitalの趣旨が伝わってくる。普通こういったファンドのEquity storyというものはLPだけに見せていくのが一般的だとは思うが、それを全体に公開していく気概は今っぽいという言葉でくくるには雑だけどそう思う(ちょっと日米の法律の違い詳しくないが一般公募できるという大きな違いがある大前提だけど)

Not Boring Capital - Fund I Memo - Newsletter
Fund I Memo First Sent Out in Early April Annotated and Redacted Hi friends 👋, I’m Packy McCormick. I write a newsletter called Not Boring about tech companies and trends that currently has over 45,000 subscribers. You can read more about my experience launching, writing, and growing Not B...

また最近新しいファンドの設立(30M)ほどのメールマガジンが届いたけどここでも情報公開度合いは同じ気概を感じる。下記のように各ファンドのIRRなどは現状のものも公開しているし、またロス率や金額まで情報公開している。

Today, Fund I is sitting at a 1.31x Gross MOIC (1.21x Net) and a 17.5% Gross IRR (12.2% Net). Fund II is at a 1.08x Gross MOIC (1.04x Net) and a 7.1% Gross IRR (3.7% Net).
Four companies have shut down out of a portfolio of 207 companies.These represent $270k of losses, or 0.69% of total invested capital.We’ve seen markdowns in an additional three companies. These represent a paper loss of $192k, or 0.49% of invested capital.

また後述するがファンド戦略についても明快であり、透明性でありオープン性というものを非常に気にしているVCファンドであり、Founderの性格であることが伝わってくる

Packy McCormickという創業者

創業者のPackyはLinkedinで見る限りいわゆる新卒でBank of Americaに務めてその後にBreatherというスタートアップでVPまで出世した方のよう。記事の中でもそこで150人ほどのチームをまとめ、スタートアップのCEOと近くで働いた経験というものが活きているとは書かれているが、そこからこの形でVCとして名を成していくのは面白い入り方だなと。(メルマガをさかのぼって読んでいるとディベートクラブに高校大学時代属していたという記載があるためそのあたりのリサーチ能力が活きているのかもしれない)

最初の方のメルマガを読むと20VCとかを多く取り上げているので、そういったPodcastを基軸として登っていたような登り方は参照にしているし、意識はしていたんだろうなっていうのが伝わってくる。新しいメディア媒体が伸びていくときにこういった登り方をするVCっていうのは今後もでてくるんだろうなと。彼自身も自分のことをCreatorGPと呼んでいて、多分TikTokやメタバース領域のメディアにおいても同様の登り方をするVCが現れてくると個人的には思っている

CreatorVC/StoryVCというタグライン・戦略

“Not Boring Capital invests in companies with stories to tell, and helps tell them.”

上記タグラインがNot boring capitalのコアになっているんだと思う。Storyというものについてのこだわりが感じられる。そしてそれを伝えられる自信もテキストから感じられる。特に2号ファンドまではこのような言い方をしていなかったけれども、2022年になり3号ファンドの設立記事を読むにフォーカスしているのは伝わってくる

Not Boring’s competitive advantage is our ability to help companies shape their narratives, and that resonates most clearly with founders of complex businesses with bold ambitions.

またこのようにナラティブを伝える手助けをすることを競争優位性と語っている。彼によると重要なビジネスを立ち上げている創業者の多くはナラティブを作るのが苦手な人であり、そういった創業者は科学者であり技術者でありオタクであるためその複雑性を翻訳していくのが苦手であると(一方結構上手い創業者も多いけどなって個人的にはおもったり・・でも確かにDeeptechなどはよりそのマーケティング的な文脈は弱い可能性が高いのはたしかに)

This newsletter is our greatest competitive advantage, and I think one of the more differentiated in venture. Importantly, it’s about narrative, not eyeballs.

だからこそこのニュースレター・メルマガこそが大事であり、そこでナラティブを紡いでいくことが投資先への貢献になるというのが大戦略であると伝えている。

実際に例えば投資先のScieceIOという企業についての記事をNot boringで掲載したところ、インバウンドでの問い合わせの75%が記事の名前をあげ、採用候補者の90%以上がこの記事を読んできたということを言ってくれるそうです(本当か!?ってくらいすごいですね)

まさにこのFlywheelを回している

そしてもっと直接的に生かしているので面白いなと思ったのが、Palletというコミュニティから採用できるというサービスを生かして、Not boringの読者をタレントとして採用できるようにしている点である。ちょっと昔の記事からのリンクなので未だにこれがワークしているかはわからないが面白い試みだと思う。まさにニュースレター・メルマガを基軸にしたエコシステムをつくりにいっている

Not Boring People
Not Boring People are members of the broader Not Boring Community who are actively looking for work! Our collective matches designers, engineers, creatives, and operators with some of the most exciting startups in web3 and tech.

投資戦略

そしてこれはシード投資としては当たり前なのだけれど、結構そのときの変化点が大きいものを探しているようであり、そういったところに都度都度フォーカスを変えているのがわかる。より1号のときは本当のSoloVCといったようにOpportunitybaseで投資をしていた印象はあるが、2号は完全にWeb3にふっている。なぜなら2021年はひたすらCryptoの年だったからだと思う。実際にNot boringの記事もCryptoがその時期多い。そして今回の3号ファンドではHard startups(Deeptechに近い考え方だと思う)にフォーカスしていくことを宣言している(下記引用参照)CryptoもHard startupsも非常に説明が必要な投資テーマであるためこういったCreatorVCとの相性も前述したように良さそうである

Hard Startups tackling important challenges in big markets will build the most valuable companies over the next decade.

具体的な投資のスコープとしてはシードからアーリー期がほとんどのようで、3号ファンドによると500K-1Mくらいが投資のレンジサイズのよう。SoloVCにありがちだとはおもうけど、おそらくリードはとることは少なく基本良いファンドのフォローや協調投資の意味合いが強いのではないかと思う。

投資ペースとしても四半期に40−50件とかいてあって本気か?ってぐらいペースが早い。そんなディールソースがあるのがすごい。ファンド1は90社ほどの投資のようでサイズの割に数が非常に多い。下記は1号の資料だけれども、現状はもう200社ほどポートフォリオが積み上がっているようだ。ANRIでさえ10年弱かけて200社なのにダイナミズムが違うな・・

ファンド1号のポートフォリオ

そして上記で説明したCreator VCの戦略を達成するためには、リードなどとってボードシートはとらないし、おそらくミーティングなどにも最低限しか参加していないと思う(このあたりInformation rightsとかもUSのほうが厳しそうだからそもそも参加の権利がないのかもしれない)そうでないとこのようなロングコンテンツを作成する時間など200社ほど投資している中でないからだ

自分がいまVCとしてミーティングでつつ働いているだけでも結構正直ミーティングで日中埋まってしまうことが多い。そのなかでNot boringのようなコンテンツに向き合える時間はほぼない。SoloVCでありこのようなフォロー投資中心とUSの文化だからできる投資方針・戦略なんではないかなと思う

なんでこんなに価値ある/面白いコンテンツがかけるのか

なんでこのメルマガはこんなにコンスタントに面白いものがかけるのだろうかってのがずっと謎で、実は未だに謎なのだけれどもこのNotoboringについてのAMAにてちょっとヒントがあった。リサーチ能力の高さはやはり確実に関係はありそう。アタックポイントを探す感覚はわかるなあ、、難しいけどそれが面白い

そして自分より詳しい人に早く聞けっていうアドバイスはそのとおり。視野が広がる感覚はそれによって得られると思う。今年は自分ももう少し文章やリサーチに時間をより割きたいと考えているので非常に参考になった

my job is to learn, synthesize, translate, and then add my own perspective.
Read and listen to every high-quality thing that I can on the topic. There’s so much good content and analysis out there, at least on pieces of the overall picture, that half the battle is curating the right information.
Most of my time is spent on research and conversations (50%+), but a surprisingly big chunk is spent just staring at the screen and thinking, trying to figure out my angle of attack. I think of it like standing at the top of a hard ski run and picking my line.
I start writing, and I keep researching as I write and realize that there are holes in my understanding or in my argument. Actually writing typically takes about 25% of the total time.
Talk to people who know a lot more about the space than I do as early as possible. This helps me figure out the current conversation in the space and avoid writing super dumb outsider takes.

今後のVCへの示唆

おそらくこのような文脈のVCは日本でも出てくると思う。例えばOfftopicなどは日本におけるNotboringっぽいコンテンツをPodcast中心に作成がすすめている(いつも面白いコンテンツをありがとうございます)こういったコンテンツをもって集客力あるようなメディアがVCをつくっていくっていうのは今後よりでてくると思っている。そういった流れっていうのが今後も必ず日本においてもでてくると思う。もしかしたらTiktokなのかもしれないしYouTubeなのかもしれないが、新しいメディアとともに生まれるVCの形は必ずあると思う

既存VCとしては脅威ではあるものの、一方リードなどはとりずらいとかはあるきはする。シード投資においては競合する場合が多いとは思うものの、ファンドサイズの巨大化というのはなかなかこういったスタイルをとると難しい。なのでそういった棲み分けであり使い分けというものを起業家としても考えていくのではないかと思う。

また共同投資が主なスタイルではあると思うのでこういったVCがでてくることがよりエコシステムを拡張させていくきっかけにもなるのではないかなと思う。日本においても今後数年以内にこういったCreatorGP・CreatorVCがより現れてくると個人的には予想している

参照:1・2・3号のファンド設立ニュースレター

Introducing Not Boring Capital
Behind-the-Scenes of Raising a Fund to Invest in Companies with Stories to Tell
Not Boring Capital: 2 Fund, 2 Boring
Not Boring Capital’s $30M Fund II and the Value of Weird Investments
Announcing Not Boring Capital Fund III
A $30 million Fund to invest in Hard Startups and tell their stories

余談

自分はWeb3の文脈から非常に良い記事を書くな〜と思ってメルマガに去年ぐらいに登録したのがはじまりでした。余談ですがなんでこんなにUSのVCは文章が上手い人が多いのだろうか、、Thought Leadershipがすごい。日本だとそんなに多くでないのはなぜなんだろうか?自分も正直文章が得意なタイプではないし、、

1つ仮説としてあるのは東京に一極集中しているから、こういった文章書くよりもご飯や飲みにいったりすることのほうが重きをおいたほうが効率通いとかはあるかもなと個人的には思っているが・・

ただこれもVC含めてスタートアップの歴史のエコシステムの違いな気もしている。競合環境も今後は違うだろうし、こういった差別化含めてどこのポジションをとるかっていうのが各VCが日本でも今後考えていかないということはより今後一層求められてくるはずで、そのときにはもう少し状況は変わっていくのだろうなと思う

でもなんでUSの情報発信の質であり量が段違いなのはなぜかはずっと疑問。。自分のレベルが低いとこういう文章下記ながら反省してしまうが、書き続けることが大事だと思うので今後も自分の思想はなるべく言語化していきたいと思う