Shunsuke Nakaji

福島に刻まれる例外状態 ~汚染土問題と民主主義の課題~

先日環境省さんのイベントで福島に行くツアーがあった。それで何年ぶりだろう、2014年ぶりに被災地に行ってきた。10年ちょっとぶりだと思う。そのことについて今回は書いてみたいと思う。なにか示唆があるというよりは大分レポのような結果になってしまう感じはあるので、それはご了承いただければ幸いである。 たまたま誘われていったのだが、被災地などに正直足を運べていなかったのは少し遠いなということもあって、あんまり行けなかったのは反省であった。実際に行ってみて見て感じるものというものは今年は改めて大事にしたいなと思っていて、そのなかで良い機会があったので参加をしてみたのは良かった。 余談だが、AIの時代にあらためてデスクトップリサーチなどはDeepresearchなど含めて代替されていく感じがひしひしと伝わってくる。だからこそ実際に現地・現場にいき、そこで感じる空気感や印象というものはもっと大事にしていかないといけないと思えたので、今回も含めて改めてフットワーク軽く現場にいくというのは、東京にいてこの仕事をしていると正直忘れがちになるが、気をつけないといけないなと今回の訪問をもって改めて思った。

創業者のセカンダリー売却について~長距離走のために~

スタートアップは短距離走に見せかけた超長距離走 スタートアップを立ち上げるというのは、人生をかけた大きな挑戦だと思う。実際、上場を目指すなら最低でも数年単位、時には10年以上の道のりになると考えるべきだと思う。 一方で、スタートアップは資金調達のサイクルによってマイルストーンが細かく区切られ、それぞれのフェーズは短期のスプリントのようにも見える。サービスを立ち上げた直後は、次の資金調達までにPMFを証明しなければならないし、そのためにかなりのスピードで動き続ける。ある意味、長距離走と短距離走を同時並行で走っているような状態だと感じる。 しかし、長期的に見れば、創業者の個人的なキャッシュフローは必ずしも潤沢ではないことが多い。上場して初めて株式を売却できる、という前提でスタートアップを進める場合、そこに至るまでの資金繰りは意外に厳しい。しかも家族がいるなら家計も支えねばならない。そう考えると、上場前に創業者がある程度株式を売却してキャッシュを手に入れる、いわゆる「セカンダリー売却」は選択肢として十分考えられるものだと思う。 とはいえ、日本においては「上場前に創業者が自社株を売るの

AI時代においては、CWO(Chief Workflow Officer)という役職がでてくるかもしれないと思った話

AIの進化と「Operator」の登場が示す未来 本日、OpenAIが発表した「Operator」の発表をみていた。これは、クラウド上でリモートブラウザを操作し、ユーザーが与えたタスクを自動で処理するエージェントである。いま流行り言葉でもあるAI-Agentの文脈・ナラティブのひとつだ。 飲食店の予約やネット通販、チケット購入など、私たちの生活に直結する作業をAIが代行する。特筆すべきは、この機能がAPIではなく画面操作を通じて動作する点だ。AIが単なる情報処理を超え、人間の代わりに“働く”時代が現実味をより帯びてきた。 https://openai.com/index/introducing-operator/ このような技術の進化を見ると、AIが単なるツールではなく、企業のワークフローに深く組み込まれる時代が近づいていることを感じる。ここで重要になるのは、AIをどう使うかではなく、AIを前提にした新しいワークフローをどうデザインするかという視点だ。DX(

トランプ政権2.0と日本:ヘゲモニー国家が終焉を迎えるとき何が起きるか

昨日、ドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任しました。初回政権(2017~2021年)のときと比較して、アメリカ国内や世界情勢はさらに流動的になっている。ウクライナ紛争の長期化、世界的インフレ、新興国の台頭、デジタル通貨やAI技術の普及──これらはアメリカの国際的影響力を相対的に弱める要因である。 トランプ政権2.0が誕生した場合、日本を含む世界各国はどのようなインパクトを受けるのか。彼が考える政策をみていると「ヘゲモニー国家の終焉」というのが自分の中では感じたものだ。そういた時代が来るにあたって日本として、また自分がいま職業として働いているベンチャーキャピタル・スタートアップとしてはどういうことが起きるのかについて考えてみる。 ヘゲモニー国家の終焉とは何か まず、「ヘゲモニー国家が終焉を迎える」とはどのような状態なのかを整理してみたい。ヘゲモニー国家とは、単に経済力や軍事力が最強の国を指すのではなく、自由貿易や国際機関への大規模な資金拠出を通じて世界秩序のルールメーカーとして振る舞う国を意味すると考える。アメリカは20世紀後半からその座にあり、各国の繁栄を牽引してきた

インターネットの都市化と地方における多様性の芽 ~コストの安さは多様性を生む~

地方で気づいた“コストの安さ”の恩恵 正月休みに、地元である香川の実家へ帰省する機会があった。昔からの友人の家をめぐりながら、あれこれと近況を語り合っているうちにふと感じたのは、「土地や物件のコストがこんなにも安い場所では、いろいろな挑戦ができるのではないか」ということだ。 実際、先輩の一人は古民家を活用した民泊を経営している。築何十年も経った建物を格安で借り、それをゆっくり自分好みに改装したらしい。都内であれば家賃や改装費だけでも相当な額になるが、ここ香川では驚くほど低コストで始められたという。 また東京から戻ってきて農家をやっている友達も同様に土地が余っていることに対してより拡大意欲を見せていた。周りの土地ももう使っていないところが多いので格安にて貸してくれているみたいだ。 こうした話を聞くにつれ、「コストの安さ」というものがビジネスの多様性を生む根源的な要素だと改めて感じた。リスクを小さく抑えられるからこそ、まずはやってみる精神が生まれるし、チャレンジを一度や二度失敗しても立ち直りやすい。首都圏では物価や人件費が高いゆえに、どうしても最初に大きな予算を組まないと動けないし