AI特化のベンチャーキャピタル:Conviction Partners

Conviction Partners:AIに特化したVC

Conviction PartnersSara Guoという女性が立ち上げたAIに特化したファンドである。もともとSara Guoは名門VCであるGreylockでGPを務めていたところから独立し、立ち上げている。

初回のファンドながら100MUSD(160億円ほど)を集めてスタートしている。また上記で書いてあるように、AI-Native Companyに投資をするVCファームである。

Conviction is a new venture firm purpose-built to serve AI-Native, "Software 3.0" companies. We believe we are extremely early in the translation of powerful AI models to powerful products that transform industries.

特化するベンチャーキャピタルとは

彼女らは何にConvictionがあるのか?それはAIのテクノロジーが指数関数的に伸びていくのが研究ベースで見えていることだと話している。彼女はGreylockではMagic edenなどのようなWeb3テクノロジーの会社に投資をしていてが、ブロックチェーンの基盤技術より今この瞬間にはAI technology にConvictionを感じたということをインタビューなどで話をしている。(他の懸命な投資家からは、機械学習のときに投資をしたが儲からなかったや、If all you have is a hammer, Everything looks like a nail というように、すべてをAIというハンマーでうとうとしているように見えるみたいな批判的なコメントもあったが、そうではないとConvictionをもっているようだ)

なにかの領域に特化していくことはVertical VCっぽいものは今までもあったが、Web3.0あたりのベンチャーキャピタルからより、一般的なベンチャーキャピタルの組織モデルから比較していろいろ変化がでてきてるように記事を読んだりしていると思う。

例えばCrypto 領域でも有名なParadigmなども立ち上げるときに、普通の投資家だと一緒に組みたいファンドがないというところからはじまり、単純に投資をするだけではなく、コードを書いたり、コードを監査したりすることができるようになることがCryptoに投資をするVCがファームとして最適なのではないかということでそういったチーム構成にしていったという話を記事で読んだりした。

実際に、Paradigmのチームを見てみると、結構な人数がResearchなどのメンバーになっていたりする。


VCの差別化としての特化

なにかに特化するということは一つ差別化ではある。一方”XXの領域に投資を特化します”というだけではマーケティング上の差別化にはなり得るが、本質的な機能まで特化しないと構造的な差別化にはなり得ない。その特化を手助けするようなチームやFunctionを用意しなければならない。

VC自体もよくいわれるように、勝者はだいぶUSだと固定化してきているなかで、2つの層に分かれていっている感覚がある。ブランドと全方位で支援チームをもつ、アーリーの覇者のようなファンドたちと、Microfundのようにテーマに特化し、そのためのチーム構成をするような特化型ファンドである。

VC含めて金融の社会においては再現性であり与信のゲームであるため、おそらく日本においても同じような構造になってくるのではないかと考えている。まだ発展途上かつ、未成熟なのでまだまだUSほどに放ってはないと思うので、そこまで固定化してないとは思うしまだまだ発展途中であることは事実ではあるが。

そのためAI特化のファンドというのが時代とともにでてくるのは理解できる。しかしWeb3だとAuditやIEOなど含めて、既存の企業という存在と異なるプロセスがでてくるためその専用のチームをつくることは理解できるが、AIにおいてはどのようにConvictionが用意していくのかは非常に気になる。まだConviction teamをみるには、Investerしかいないのだが、彼女も. “We’re not going to assume the traditional knowledge of what a venture firm thinks belongs in house and out of house,”と取材で話をしているので、なにかチームは今用意しているのではないか。

テクノロジーの社会実装黎明期においては、起業家とVCの間で情報・コミュニティのアビトラがある?

例えば今はSaaSというテーマや、スタートアップのグロースみたいなテーマは、起業家の情報発信やVCの情報発信、海外SaaSでいうとのBessemerなどが発信してくれているおかげで、情報についてのアービトラージは少なくなってきてる感じがする

しかし一方テーマが黎明期・勃興期においては、まだまだ情報の認知が広がっていなくて、そういったものを多く投資しているVCのほうに最先端の情報があつまってくる可能性は高い。(もちろん常に最新情報に触れているのは基本的には起業家サイドだとはおもうが)

またWhy Embed というConvictionの記事にも下記のように書いてあり、AIの変化のペースが驚くべき早いため大企業などはその動きの遅さからキャッチアップがしずらいため、スタートアップに可能性があることを指摘している。Web3などにおいても同じアナロジーがあったように記憶している。

This is not a comfortable environment for big companies. The pace of change in AI will blow your hair back. You can't read the research papers quickly enough. Big companies are slow to make bets. They need to worry about the financial quarter and do "change management." They struggle to reason about non-determinism. They have too few hackers and too many bureaucrats. 

そのためWeb3やGenerativeAIのようなテクノロジーの社会実装がまだ未成熟なときには、多くそういった領域に投資をしてファクトを集めたものが勝つ可能性はある。そういう意味において、そこに特化して情報のアービトラージを利用しにいくというのはVCの一つの勝ち筋としてはあるのかもしれない。

一方で、そうだとしても基本メルマガ含めて情報発信について、企業側や実行者側が行うことが普通になってきている(自分はそれをD2C型経営とよんでいるが)ので、昔ほどそこに情報のアビトラが本当に存在するのかは正直あやしいと思う自分もいる。


アクセラ・Podcast・CommunityというVC定番はもちろん用意

いわゆるVCが行う定石はすべてConviction Partnersも用意してある。情報発信としてのPodcastは NO PRIORS というものをAI関連で運用中であり、Community機能も用意している。また、Embedというアクセラなども運用しており、8週間のアクセラプログラムで、著名なスタートアップ代表や起業家からのアドバイスなどはもちろん、投資としては150KUSDをnocap,no-discountで投資するというもの。

日本のアクセラなどでは、流石にno-discountまではみたことがないので、AI投資に関するUSの競争環境の凄さを垣間見ることができる。またそれ以外はMistral modelsへのアーリーアクセス以外は結構日本のVCなどのアクセラでもよくみる支援内容かなと。Ycomをベースモデルにしたアクセラであることには代わりはなさそうだ。

100MUSDをファンドとして集めながらこのアクセラにおいては150Kほどの出資なので、おそらくだいぶ濃淡をつけてやっていくのだと思う。この投資においては本当にコミュニティ形成と、自分たちが思いつかないようなプランがほしいと書いてあるように、一種のリサーチの意味もこめてこのアクセラは運用しているのではないかなと思ったりする。


Portfolio company

少し本題からそれてしまった気がするので、このConvictionの今Webページ上にあるポートフォリオカンパニーをみていきたい。現在は11社に投資を行っている。公表していないものがある。

Baseten:AIモデルを本番環境にDeployすることを効率化できるサービス。元々は機械学習モデルを簡単に導入できるというところから始まったが、GenerativeAIの勃興によりサービスのValue propが変化。

Cognition Labs:“the world’s first fully autonomous AI software engineer,”ということを掲げてcode writingを補助・自動化するサービス。2Bドルの時価総額。

Essential:Enterprise brainというような、大きな企業のデータ分析や、単調なタスクの自動化を担えるようなAIを開発中。

Foundry:AIを活用する時のGPUの効率化サービス。sequoiaのスカウトからの本採用。

Harvey:法律家向けのAIサービス。法務的な文言の作成や、判例などの検索など含めて効率化できる

HeyGen:AIビデオサービス。アバターなどを作成して、自分のアバターが作れて、マーケティングやビジネス活用できる。

Minion:パーソナルアシスタントAI

Mistral:フランスのOpenAIのような存在。オープンソースモデルのアプローチで開発を多く進めている

RunSybil:サイバーセキュリティのためのAI。虚弱性をAIを活用して発見することができたりする。Active defenceの要素を打ち出している

Seek:データ分析のためのGenerativeAI。ビジネスユーザーがどういったデータを尻たいかを自然言語で書くと、そのためのコードを提案してくれるよう。(これは便利。。)

Sola:LLMを活用したワークフロー・業務フローを作成できるサービス。

もうすでにユニコーンになっているような企業からまだまだ記事にもなってない会社などはあるが、、AIでできることに関しての投資や、AIが活用されるためには必要なサービスに対しての投資、どちらもポートフォリオとしてある。


Conviction Partnersが考えるStartup ideas

YcombinatorのRequest for startupsのように、ConvictionもAIテーマにおいてのスタートアップのアイデアを発表している。前述したようなアクセラ含めてテーマ特化においては、やはりVenture creationまではいかないが、より前のめりに投資をして企業をつくっていく姿勢なのかなと思う。いくつか自分も気になったAI企業のアイデアをピックアップする。

Your Personal Seller

SMB向けの事業者がモノを売ったり、なにかサービスを宣伝したりする際に現在はあまりにもいろんなチャネルや方法がある。それを現在はマーケティングコンサルタントや、広告代理店などふくめてミドルマンに依頼しているが、そのあたりがもしかしたらAIの発展によって変化が起きる可能性は十分にある。データさえ用意すれば、画像からビデオからABテスト用のものまで、まさにYour Personal Sellerが確かにAI技術を活用してできる可能性はある

Workforce Tetris

名付け方がいいなと思った。確かにレストラン、小売などのHourly workerなどの採用と配置については時間がかかるという話は以前にも聞いたことがある。例えば病院の日直なども層な気がしている。それ自体を様々な条件をインプットすればテトリスのように調整してくれるというのは便利そうではある。タイミーなどをよく使う企業などにおいては便利かもしれない。

Always Pick Up the Phone

ECでモノを買ったり、相談したいときに小さい規模の会社に自分も電話したりしたことがある。だが大抵は電話に時間がかかったり、でなかったりすることが多かった。そのときに、確かにAI技術を活用して常に電話に音声反応することができれば企業としては受注機会ロスや、顧客満足度向上にもつながるような話であるように感じる。

一方カレンダーのリンクを送りつけるのが失礼にあたるかどうかという問題のように、文化的なものがどのぐらいついてくるのかは難しい。日本っぽいかもしれないが、電話にAIがでるなんてなめているのか!なんていってくるような顧客もいるのかもしれない。

AI-Native MMPGs and Social

Ai-Nativeなソーシャルってなんだろうと考えたときに、確かに個別化っていうのはわかりやすくあるだろうし、Fake・AIっていうのことを認識してなにかを楽しむ。虚像を楽しむエンタメの時代がくるのかもしれないと読みながら思えた。現実にいないとわかっているAIフレンズとの会話を楽しむことがクールみたいなのがくるのか・・?

What if the next generation of entertainment is personalized generations? If one like to look at pictures of “cats where they shouldn't be,” let's generate them. In an era where one can increasingly produce any media (images, audio, video, memes), mass personalization feels within reach.

他にも多くのビジネスアイデアが載っていて頭の体操にもなるので、AIビジネスアイデアについて気になる方はぜひ。

1年半前ほどに自分もこのあたりのGenerativeAIをつかって何ができるかの妄想をだらだと書いたこともあり、ぜひこちらもお時間あるかたぜひ。

#17 Generative AIのユースケース100ナカジ@nakajish·2023年2月13日Read full story


ここまで今回はConviction PartnersというAIに特化したVCについて調べてみたこと・それを元に考えたことについて書いてきてみた。

GreylockでVCをやっていて、ここで独立してまでやる。しかも彼女自身は重複だがWeb3に対しても大きく投資をしていた人物でもあるため、Crypto/Web3ではなく、このAIの波で独立してファンドをつくった理由も聞いてみたいが、それほど一つの大きな波として捉えているのだと思う。

Software3.0の時代?

これを大きな波とらえている証拠に彼女としては、今回のAIの流れ自体をSoftware 3.0とよんでいる。この1.0−3.0への流れは、確実にWeb3.0へのオマージュである。

このSoftware3.0への流れを完全に自分が理解できているわけではないが、下記の引用から考えるに、Software1.0は人が考えたものでのOutputしかできず、Software2.0ではおそらく機械学習などのラベリングによる、協調フィルタリングのようなレコメンド機能などができたことを意図し、そしてSoftware3.0においては、LLMモデルなどを上手く活用することで人の想像を超えるような全くことなる体験であり価値提供ができるのではないかということだと理解している。

These intelligent “Software 3.0” companies will both need to be great software businesses in the traditional sense (and can thus benefit from great networks and tribal knowledge), and will also be something entirely alien. If Software 1.0 was about human-written code, and Software 2.0 is about dataset labeling, Software 3.0 will be about manipulating foundation models.

たしかにAI-NaitiveなSoftwareというものはまだまだ現在発展途上のような気がしている。例えばチャットだけでいろんな操作ができる、例えば人になにかを依頼するときにはUXやUIなどはいらない。言語だけで依頼することが普通だ。そのようにSoftware3.0の世界においては、UIという概念自体が変わる可能性さえある。

しかしまだそれ自体は、OpenAIのChatGPTをはじめとしたChatが先行して頭のなかにあるからこそのアイデアであり、まだまだいまから革新的なものがでるのかもしれない。それはスマフォにおけるパズドラのようなゲームの登場に近いのかもしれないが、デバイス・技術においてぴったしなSoftwareやUIのあり方というのは必ずある。AI/Software3.0時代のそれを模索する期間になるのかもしれない

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